安楽寺は小さな田舎の寺で、劇的なことは何も起きなかったようだ。檀家が減り、手入れが途絶え、やがて重い瓦屋根がそのまま崩れ落ちた。今、本堂は自らの上に折り重なり、砕けた梁と瓦の小さな丘になっている。その上には梵鐘がまだ梁からぶら下がっていて、撞く手を待っているかのようだ。
崩壊のまわりでは、春が静かに仕事をしている。廃墟の下には野の花が咲き広がり、茂みの中からは石の守り神がこちらを見ている。まだ立っている一角には、灯籠や仏具とともに祭壇が残り、祈りの途中で時間が止まったままだ。訪れたのは2024年4月、花がいちばん美しい頃だった。