富士山の火山礫の斜面、森林限界のはるか上に、錆びついたジープ・ワゴニアが一台だけ横たわっている。いつ、どうやってここまで来たのか、正確に知る人はいないようだ。何十年もの台風と雪と火山砂利が車体を素の金属まで削り、エンジンはむき出しになり、開いたテールゲートから車内には周囲と同じ黒い砂利が少しずつ積もっていく。誰かがかつて、アメリカのファミリーワゴンで日本一の霊峰をあり得ない高さまで登り、そのまま二度と下ろさなかったのだ。
この廃車は静かに有名になった。ハイカーたちはわざわざ斜面を横切って見に来るし、2024年には当局が撤去命令まで出したが、報道によればまだ動いていないという。私は二度撮影した。一度目は2022年11月の灰色の空の下で、二度目は2024年5月、山頂にまだ残雪が筋を引いていた頃だ。